10年以上前になりますが、半年ほどイタリアのフィレンツェに住んでいました。
楽しかったイタリア生活の中で、強烈に印象に残っている光景があります。
それはシチリアで訪れた、『墓地の風景』。
お花が綺麗だったので、なんとなく通りがかりの墓地に足を踏み入れたのですが、日本と違って、何というかとっても明るい雰囲気だったのです。
ちょうどお昼時だったこともあり、墓地にはさまざまな人が出入りしていました。
亡くなられた奥様のお墓の前で、おじいさんが写真(向こうのお墓には写真がたくさん飾ってあります)と向かい合って普通に昼食を楽しんでいたり、
連れてこられた子供達がワイワイ遊んでいたり、
それぞれが、自分達のスタイルで、亡くなった人とコミュニケーションを取っているように見えました。
その光景を見ていて、なんだか胸が熱くなりました。
ご存知のように、イタリアは敬虔なクリスチャンの多い国。
当然お仏壇という文化はありませんから、そうやって故人と接するのが当たり前なのかもしれません。
対して日本(の多くの家)にはお仏壇があります。
わざわざ墓地まで足を運ばなくても、故人と接することができるわけです。
しかし現代の日本のお仏壇って、少し寂しげに仏間に取り残されているような印象が私にはあります。
それでも仏間があればはまだ良い方で、マンションにお住まいの場合はお仏壇を置きたくても置けない方も多いのではないでしょうか。
いくら家具調仏壇でも、やはりリビングに置くと私は違和感を感じてしまいます。
お仏壇っていろいろ制約があるように思いがちですが、調べてみると『壇を設ける』ことが一番大切であって、素材や置き場所は実はそれほど重要ではありません。
本当は仏壇の上を人があるくことはタブーとされているのですが、そうしたらマンションに置くことは最上階以外は不可能。
そういう場合は、天井に“空”とか“天”とお坊さんに書いてもらえばOKとも聞いたのですが、私はそんな堅苦しいことよりも、家族の気持ちの方が絶対に大切だと思います。
故人も、ほとんど誰も入ってこない部屋に寂しく残されるより、みんなの生活を見届けられる方が良いのではないでしょうか。
もっと気軽に亡くなった方とコミュニケーションが取れるように、
しかしその故人を知らない訪問者が、部屋に入ってもあまり気を使わなくてもいいように、
そんな思いで、このリビング仏壇を考えました。
当初はリビングしか頭になかったのですが、最近では介護付きマンションに入られる方にも、お部屋に合わせたお仏壇を何件も作らせて頂きました。
いつかその光景を見て、外国からの訪問者が感動してくれたらうれしいです。